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コロナ危機後に航空・旅行ビジネスに起きる8つの変化とは? グーグルの方向転換から戻らない需要まで、航空コンサル会社が予測

米国の航空コンサルティング会社アイディアワークス社が、コロナ危機後の旅行ビジネスに起きる8つの変化についてまとめた。

このレポート「フライトプラン2020:近い将来、旅行業に起きる8つの変化(Flight Plan 2020:8 Ways Travel Will Be Different a Few Months from Now)」では、コロナ危機をきっかけに旅行ビジネスで予想される変化について、アイディアワークス社長のジェイ・ソレンセン氏が予測。先行き不透明な状況が続き、変更手数料やキャンセル料のあり方が見直されるきっかけとなると指摘する。

また、このところ旅行業参入を進めていたグーグルの関心が教育産業や公衆衛生に向き、少なくとも数年間は、旅行ビジネスへの関心が相対的に低下するとの見方を示した。

8項目の概要は以下の通り。

  1. 供給、在庫は減少傾向へ

IATA(国際航空運送協会)では、2020年の航空旅客数の予測で下方修正を続けている。同様に、ホテル、バケーションレンタル、レンタカー、観光ツアーも厳しい状況にあり、コロナ危機が収束するまで存続できない事業者も出てくる。

結果として、旅行業界の供給規模は全体的に縮小する。ここ数年、旅行関連ビジネスへの投資は活発で、それが革新やクオリティ向上にもつながってきたが、大規模な公的支援がない限り、この動きはしばし休止となる。

また危機後、消費者はまず割安価格のものから手を出すと予想されるため、サプライヤー各社は、イールドを維持するために供給数を絞り、雇用機会も不安定な状態が続く。

  1. しばらくは自宅から近い場所でのレジャーが主流に

比較対象としては、もはや規模が小さすぎるSARSだが、同事例ではWHOのパンデミック宣言から事態が回復に向かうまでにかかった期間は3~4カ月。今回のコロナ危機にあてはめると6~7月までかかる見込みだ。北半球では、今夏のホリデー需要にぎりぎり間に合うと期待する事業者があるかもしれない。一方、9.11テロ事件後の米国マーケットに関する同国運輸省の統計を参照すると、旅行需要が完全回復するまでには2~3年かかっている。

ただし需要回復期には、「自宅から近い方が安心」というムードが残る。

欧州なら欧州、アジアならアジア、それぞれ地域内の旅行が主流になり、自動車、鉄道、あるいは機距離フライトでの旅行がまず動き出す。例えば米国では、米国内の国立公園に出かける人が増加する一方、都市部で人が大勢集まって楽しむような催しは警戒される。旅行においては「田舎、アウトドア」で健康的なことを楽しむ気運が高まる。

  1. 健康面での安全が重要なファクター

危機が去った後も、飛行機の座席のトレイテーブル、ホテル客室内のリモコン、車のステアリングホイールなどに触れることに、誰もが今までよりずっと慎重になる。

公衆衛生への配慮は、テロ対策と同じくマストになる。例えば航空機についても、エンジン性能に加え、機内環境の衛生にも注意が向けられるようになり、「清掃が不十分だった」ことを理由に、出発を遅らせるフライトもあり得るだろう。

  1. 消費者側に根強い値下げへの期待

ごく少数の例外を除き、誰もが倹約志向に転じるなか、値下げによる需要喚起があちこちで始まる。景気後退の局面では、必ず値下げになるという消費者側の期待も大きい。こうした状況下では、消費者に対して各種サービスの手数料を値上げするのは好ましくない。同じ理由から、宿泊ビジネス各社は、これを機に宿泊費とは別に徴収する「リゾートフィー」を見直すべきだ。

  1. 公的支援をうけた企業が背負う責任

通常、航空会社はSNSやニュースで厳しい批判の対象となることが多いが、今回は大打撃を受けた業界として、早い段階から、政府による支援対象となっている。こうしたサポートにより、航空産業が完全に崩壊する事態を免れることができるだろう。

航空会社側は、支援への感謝を忘れないこと、また他業界や消費者からの視線を意識することが肝要だ。少なくとも2020~2021年は、役員報酬の話題は大きな怒りにさらされる。航空需要が回復した後も、公平な利益配分を十分に考慮する必要がある。

  1. 変更手数料に対する厳しい視線

例えば、最も利益をあげている航空会社の一つ、サウスウエスト航空では、事実上、変更手数料もキャンセル料も徴収していない。通常、払い戻しはトラベルファンドの形で支払われ、有効期間は購入日から1年以内。今回のコロナ危機下では、この期限をさらに延長している。

パンデミックへの対応策として、目下、世界中の航空会社が手数料なしでの変更や、現金またはトラベルクレジット形式での払い戻しを行っており、ホテルやレンタカーでも同様の動きが広がっている。だが、先行き不透明な状況は、今後しばらく続くだろう。財政難を理由に、事業者が再び手数料を徴収するようになることは、消費者には歓迎されず、政府当局や政治家の視線も気になるところだ。

ウィズ・エアー(Wizz Air)の施策は参考になる。同社では、利用者がクレジットカードやデビットカード口座への払い戻しではなく、トラベルクレジット形式での払い戻しを選んでくれた場合、金額の120%を提供している。クレジットカード等に払い戻す場合は額面通りの100%。この手法なら消費者に歓迎される上、航空会社側はキャッシュを減らすリスクを軽減できる。

  1. ビジネス渡航需要の一部は永遠に戻らない

自宅からオンラインで仕事をしている人が増えている。

以前のように、相手に会って仕事を進められる環境が戻ることを切望するのはもちろんだが、Zoomなど各種アプリケーション経由でのコミュニケーションを経験するよい機会にもなっている。実際に観光したり、旅行したりするのとは比べものにならない。

だが多くの人がリモート会議に慣れることで、業務渡航マーケットに変化が起きる。スピリット航空のベン・バルダンザCEOは、長期的には5~10%減、特に3~4人での短いミーティングは、今後オンライン開催に切り替わると見ている。一方、顧客へのセールスコールや工場視察は、従来通り現地訪問が必要だと予測している。

  1. グーグルの関心は別の業種へ

ここ数年、旅行業界では、グーグルの進出加速を懸念してきた。グーグルフライトやグーグルマップ、あるいはGメールの機能が拡がり、旅行サービスのゲートウェイ化が進んでいたが、図らずもパンデミックにより、方向転換が始まっている。

例えば学校では、リモート授業のために、グーグルのミーティングツールの一つ、「Hongouts Meet(ハングアウト・ミート)」を採用するようになった。また各国の保健当局は、パンデミック対策で重要な人々の移動状況を把握するため、モバイル位置情報を使ったデータの収集やトラッキングに乗り出している。

グーグルにとっては、新しい商機が広がっており、オンライン教育や公衆衛生の分野で、大きな投資が期待できる。対照的に、旅行マーケットはすっかり縮小している。どちらを優先するかは明白だ。

レポートの原文は下記から参照できる。

https://www.travelvoice.jp/20200528-145998

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